福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -034/036page
対する思いが強まったことが分かる。これは検証授業1でも触れたが,2時間連続の授業について大半の生徒は好意的であり,考える時間が十分にあって,考えを深めることができたことが一因であると思われる。ただ,2時間連続の授業が考えを深めるのに効果的ではなく,2時間連続の授業を展開するにあたって,読み物資料とビデオ資料を組み合わせたことが功を奏したと考えられる。人間としての生き方を考えさせていく上で,自分の考えを深め,価値の内面化を図るのに,2時間連続で読み物資料とビデオ資料を組み合わせた授業を展開することは効果的であることが分かった[資料2,9]。
[資料9]
Q.自分で一番考えることができた授業はどの形態ですか。
[読み物資料を使った授業(4人)] (その理由) ・読み返しができる。 [読み物資料とビデオの授業(17人)] (その理由) ・教科書の内容とビデオの内容を重ねて考えることができる。 [ビデオを使った授業(9人)] (その理由) ・分かりやすい。
(3) 視聴覚教材の活用について
調査結果[資料9]からも分かるように,ビデオ資料を用いた授業について好意的な生徒が多い。その理由として,@読み物資料だけではイメージできない状況が分かること,A主人公の気持ちや考え方がよく伝わってくること,B現実性があること,C分かりやすいことなどがあげられる。ビデオ資料は視覚にダイレクトにかつリアルに訴えるので,考えを深めるのには効果的であることが分かった。また,検証授業1では終末の段階に,検証授業2では主資料として展開の最初の段階で活用してみたが,ビデオ資料の内容や時間によって,活用する段階について工夫が必要であると感じた。
(4) 道徳の授業に対する関心について
事前の意識調査と比較し,道徳の授業に対する関心が高まってきたことが事後の調査からも伺える[資料10〕。
[資料10]
Q.あなたは,道徳の授業が好きですか。 好 き まあまあ 嫌 い 4人→10人 17人→17人 8人→2人
この検証授業を通して,生徒の道徳の授業に対する期待感が感じられるようになったことは大きな成果である。進路決定を目前とした生徒にとって,自分の進路を考える上で,心を揺さぶられ,自分の生き方に生かそうとする何かを感じ取ることができたからと思われる。
W 研究のまとめと今後の課題
1 研究のまとめ
(1) 視聴覚教材を活用することによって,生徒の心を引き付けると共に生徒自身が自分の考えを深めることができた。特に生徒にとって身近で現実的な資料が効果的であることが分かった。その反面,理解が不十分な生徒にとっては,視聴覚教材を活用しても,生徒の考えを深めるのは難しいことも明らかになった。
(2) 読み物資料とビデオ資料の組み合わせや2時間連続での授業展開を工夫することによって,自分の考えを確かなものとし,深め,内面化を図るのに効果的であることが分かった。
2 今後の課題
(1) 複数時間扱いでの授業の場合,どのような学習指導過程が効果的か,また,資料を組み合わせて活用する際,どう展開するのが効果的か,さらに研究を深めたい。