クリスタルガラスの旋律 佐藤潤四郎の世界(1/2)

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至上の旋律
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私たちが普段何気なく使っている、ガラスという素材。それは無機質で何も語ろうとしない。だが、一人の男によって命を吹き込まれたガラスは、その時から至上の旋律を奏で始めた。
佐藤潤四郎
時間: 1分00秒
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佐藤潤四郎。明治40年、郡山市内の開業医の家に生まれる。旧制安積中学を経て、東京美術学校を卒業。始めは金工家としてデビューする。その後、わが国のクリスタルガラス工芸のパイオニア、各務鑛三と出会い、ガラス工芸へ転向。以後、各務や岩田藤七に続く昭和を代表する作家として国内外で活躍。昭和63年に亡くなるまで、名作羊車を始め多くの傑作を世に送り出した。平成四年に開館した郡山美術会館では、この郷土が生んだ偉大な工芸家の業績を永遠に伝えるため、積極的に潤四郎作品の収集・展示を行っている。
クラフトマン・ラプソディ
時間: 2分31秒
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潤四郎作品の最大の特色は、実用性と装飾性を兼揃えた品の良いデザインにある。ガラスデザイナーとして基本的造形物と考えていたタンブラーや、北欧のバイキングに源を発するルーマー杯など、実用性を第一としながらも、上品で洗礼されたデザインの数々の食器類はその代表である。このオリンピックブルーガラス皿は、現存する数少ない戦前の作品。微妙に青み懸かった透明感は、気高さとともに清涼感を感じさせる。そこの部分にガラスを粉々に砕いた破片、即ちカレットを封入したこの花器は、イギリスでの展覧会に出品され好評を得た。また、小首を傾げたように胴から口にかけてのラインを少し傾けた、「花器・何をしようか」。ほっぺに指を突きながら少し首を傾げたような「花器・ちょっと考えて」。これらの作品からは、ちょっとした遊び心によるユーモアと潤四郎の暖かい人柄を偲ぶことが出来る。実用のガラス器だけではない。オブジェも穏やかで上品。それでいて嫌味のない洗練されたデザインのセンスを感じ取ることが出来る。気品にあふれ、それでいて澄ましたところがなく、温もりすら感じる。それが、潤四郎の目指したガラスなのである。

鉄とガラスのコンチェルト
時間: 1分34秒
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金工家出身の潤四郎には鉄を叩いて形を作る、いわゆる鍛鉄においてもユニークな作品が残されている。そして潤四郎は鉄とガラスを組み合わせた、鉄枠吹き込みの技法を習得した。潤四郎の場合フレームが鍛鉄なので、特に鍛鉄吹き込みと呼んでいる。鍛鉄は、彫金など他の金工技法に比べ、重厚さ素朴さが魅力である。そこへ潤四郎の洗練されたデザイン感覚による手が加えられた鍛鉄のフレームは、ほのぼのとした暖かい魅力に包まれている。鉄のフレームの内側にガラスを吹き込む。フレームにあたったガラスは、空間を求めてフレームの隙間からはみ出そうとする。それによって、計算には無い偶然の面白さが生み出される。重厚で且つ素朴な鉄。高級感と脆さを持ち合わせたガラス。まったく異質な二つの素材の組み合わせだが、潤四郎は見事なまでに、その二つの素材によるハーモニーを完成させたのだった。
白鳳-昭和・・・
そして未来へのシンフォニー
時間: 1分53秒
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青垣こもれる大和は国のまほろ場。今なお古都の佇まいを色濃く残す街、奈良。その郊外、西の京と呼ばれる里に二つの塔が並んで聳え立つ。白鳳文化を今に伝える、薬師寺である。その薬師寺の失われて久しかった西塔の再建や、新たなドウウの建設など、昭和、平成二代に渡る伽藍建設事業に潤四郎も関わっている。潤四郎は薬師寺の依頼で、西塔と玄装三蔵院の舎利器を製作し奉納した。郡山市立美術館で収蔵している舎利器作品は、総てその試作やその控えである。1300年もの風雪に耐えてきた国宝の東塔。その対称の位置に再建された西塔。この神祖の下に、潤四郎作の舎利器が収められている。これは直径およそ30センチメートル、深さおよそ20センチメートルの礎石の穴の中に入れると言う、寸法上の制限の中で作られた西塔舎利器の試作である。いかし、窮屈さを感じさせない外観は、潤四郎の確かな技術の裏付けである。
玄奘三蔵院
時間: 1分33秒
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西遊記の三蔵法師のモデルとして知られる玄奘三蔵は、中国はもとより、わが日本の仏教会にとっても恩人とも言うべき人物である。その玄装三蔵の遺徳を称えるために、新たに建立された玄奘三蔵院。そしてこの二つは、玄装三蔵院に収められた玄装三蔵のための舎利器の試作である。繊細なカット技法が表面に施された舎利器の控え。そしてそれを安置する、眩しく煌くカバーの控え。天竺から遠い、貴重な仏典をもたらすため幾多の困難を乗り越えた玄奘三蔵。その、強靭で且つ崇高な魂を祭るに相応しい器である。薬師寺に奉納された潤四郎の舎利器は、薬師寺の関係者ですら二度と拝むことは出来ない。しかし、郡山市立美術館の収蔵するこれらの試作品によって、その美しさは永遠に語り継がれてゆく。

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