7月 |
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7月。鮫川村の夏が始まりました。燦々と照りつける太陽の下、植物も昆虫も、その命を強く主張し始めます。7月のエノキ畑は、オオムラサキのさなぎでいっぱいになります。こことここにさなぎがあるのが見えるでしょうか。エノキの葉とそっくりに化けることで、天敵から身を守ります。これを擬態といいます。 |
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7月5日の朝、先日見たさなぎの色が変化していました。羽化が近づいてきたことを示します。さなぎの中で成虫に変わってきているのがはっきりとわかります。よく見ると羽の模様まで見えます。このとき、私達はこのさなぎに気を取られ、見過ごしていたことがあります。実はすぐ脇に羽化したばかりの成虫が居ました。オオムラサキのオスです。普通、オスはメスより1週間ほど早く羽化します。すっかり羽も乾き飛び立つ直前でした。次はお前の番、早く出て来いよ、待ってるぞー、と、エールを送っているようにも見えました。昼過ぎ、私達は先ほどのさなぎを観察することにしました。このさなぎはもう羽化直前。今にも飛び出してきそうな感じです。羽化直前の印は、この部分が蛇腹状に広がってくる場合が多いようです。暫く待っていたら、別の場所のさなぎが羽化を始めました。頭と背中で殻を割り、少しずつ、少しずつ外に出てきます。どうやらメスのようです。足が抜け出すのと同時に、体を反転させ、抜け殻に掴まります。羽化の終了です。羽化の直後、樹液を吸うための口吻をのばしています。これは左右の顎が変化したもので、二本がくっついて、ストローのようになります。この後は羽が伸びるのを待ちます。羽が伸びきるまで、およそ20分。この時間、成虫は不要な水分、不純物を何回かに分けて排出します。ちなみにオオムラサキなどタテハチョウの仲間は足が、ここと、ここの4本しかないように見えますが、実はこの部分に退化した前足があります。現在では味を見る役目に使われています。羽が乾くまでおよそ4、5時間、ゆっくりとそのときを待ちます。先ほどのさなぎです。頭の部分が割れてきました。羽化です。しかし、このさなぎはこの後、ぱったりと動かなくなってしまいました。どうやらさなぎから出ることができず、力つきて死んでしまったようです。10ヶ月育った命、成虫として羽ばたく直前の死、悲しくはかないことですが、これも現実なのです。そしてまた、新たな羽化が始まります。今度は大丈夫。元気そうです。どうやら、オスのようです。紫色の羽です。この瞬間が一番美しいという人がいるほど、オスの羽化は華やかで印象深いものがあります。こうして鮫川村のオオムラサキは、7月上旬、次々と飛び立っていきます。卵から孵って11ヶ月。夏、秋、冬、春、そしてまた夏。鮫川村の四季の変化と共に成長した一年です。この後、オオムラサキの成虫は、クヌギなどの樹液をいっぱい吸い、次の世代へ命を託し、その生涯を終えます。現在、里山の減少と環境の変化に伴い、その数が減少しているオオムラサキ。昔はどの里山でも普通に見ることができました。でも、鮫川村では、今でもオオムラサキが人里まで飛来してきます。それは、多分、オオムラサキが鮫川村をすみやすい環境として認めたから。そして、何よりも、自然を愛し、自然と共生していこうという村人の祈りが伝わったからなのかもしれません。里山鮫川村は、いつまでもオオムラサキと共に暮らしていくことでしょう。 |
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