ふるさと川俣の名山 -074/104page

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海老が作の延命神(伝説)

 八幡太郎義家が北方の戦いに敗れ、倉ケ作の山道を抜け海老が作に差し掛かった時、1本の大きなケヤキの下で馬を止め、しばしの憩いをとりました。綿のごとく疲れ果てた義家はついうとうとと、いつしか深い眠りにおちいりました。すると、間もなく目の前に白髪の老人が現れ「これより先の神社の所に大きな杉の木がある。そこまで落ち延びれば大丈夫。」と告げました。義家は、はっとして目を覚ますと、そこにはもう白髪の老人の姿は見えませんでした。神のお告げかも知れぬと部下を元気付け、海老が作を出発した時はすでに日はとっぷりと暮れていました。折りから空からは白いものが降り始め寒さがますます厳しくなってきました。やっとのことでたどり着いた義家は、明けて翌日ようやく追いついた敵に囲まれ、絶体絶命の苦しい立場に立たされました。しかし何と思ったか敵は戦わずして兵を引き始めました。神社の周囲の杉の大木が折りからの雪で、源氏の大軍の白旗に見えたからでした。こうして義家らは危うく難を逃れました。この時義家は休んだ大ケヤキの下に馬の大事な金の鞍を忘れてきたのを思い出しました。急いでとって返しましたが鞍はありませんでした。義家は命を救ってくれたその場所に、小さな社を建て、延命神と名付けました。

 延命神の祭礼は毎年9月の9日で、この神に仕える部落の人たちはウナギを食ってはならない掟があり、もしこれを破ればたちまちマムシに噛み付かれるといいます。それだからこの所は昔からマムシが沢山いる所として有名でした。

キクザキイチゲ
キクザキイチゲ


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