月舘町伝承民話集 -007/200page
−無名戦士の墓− どんよりとして 曇った秋空から 細い雨がしとしとと降っていた。 暗い闇夜の見知らぬ山道を 敗惨の彼は あてどもなく逃げ歩いていた― 耳を聾するほどの 敵味方の打ちつづけた銃声の中で 彼は傷ついたからだを 漸く戦列を離れて あてどもなく山の方をさして ひとり逃げ出した 戦場からのがれたいと 思った時 彼は温い人家を求めて
−無名戦士の墓−
どんよりとして
曇った秋空から
細い雨がしとしとと降っていた。
暗い闇夜の見知らぬ山道を
敗惨の彼は
あてどもなく逃げ歩いていた―
耳を聾するほどの
敵味方の打ちつづけた銃声の中で
彼は傷ついたからだを
漸く戦列を離れて
あてどもなく山の方をさして
ひとり逃げ出した
戦場からのがれたいと
思った時
彼は温い人家を求めて