月舘町伝承民話集 -020/200page

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安 洞 霊 神 の 話

 月館の字町に法印屋敷という所があります。今から150年程前、文政のころですが、ここに秋山という法印様が、住んでおりました。世の中の人たちから頼まれて、うらないをしたり、まじないなどをして暮らしておりました。ふだんは大変よい人でしたが、とても酒が好きでひまさえあれば、朝から晩まで酒をのんでいるのでした。そして酒をのむと、いつものおとなしい性質がころりと変ってしまって、とても乱暴になってだれにでもけんかをしかけたり、ふだん仲よくしている人にでも悪口を言ったり、女や子供に向かっても悪ふざけをする有様でした。そのためおよめさんになる人もなく、一人ぼっちで寂しい生活をしていました。村役人やとなり近所の人たちが心配していろいろ話しかけるんですが、酒を飲まない時はハイハイといっていかにも改心したようにしておったのに、お酒を飲み出すと別人のようにあばれ出してだれのいうこともきかないのでした。

 安政4年2月……その年は大変寒い年でした。町の若者たちが初午の祭りをしていたところに秋山法印があばれ込んで来たのでした。十数人の若者たちは常日ごろこの法印にさんざん悪口をいわれたり、町の多くの人たちもいつでも迷惑をしていたので、ついにあばれ出した法印をとり囲んで打つ、ける、なぐるという暴行を加えました。大酒を飲んで酔っていた法印は大勢の若者たちのため足腰立たない程痛めつけられました。やがて夕日も落ちて暗くなりかけるころになりましたが、法印は倒れたまま動きません。実は若者たちにたたきのめされてとうとう死んでしまったのでした。つまり打ちどころが悪かったのでしょう。しかし十


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