月舘町伝承民話集 -036/200page
す道がある。この山道は相馬から通じていた。そのころ相馬の若者たちは、伊達の状況を見て食糧不足を知 って夜おそく三斗入の米俵をかついでやって来て、銭にかえて小遣いかせぎをする者があった。自分の家の 米俵が不足すると、よその米俵までかすめてそれをかついでこの山道をせっせとやって来て、銭をかせいで 帰るのだった。村の人達はこの道をいつとはなしに「盗人道」 と呼ぶようになった。
そして、そのおかげで生命をつなぐ人達も多かった。村びとたちはその道ばたに明神様をまつって、この 道の旅行の安全と部落の繁栄を祈ることになった。今もや笹田の部落の人たちは、この明神様を氏神とし て毎年お祭をつづけている。この明神様のところを細い川が流れていて、明神様から上流には珍しい山椒魚 がすんでいる。春夏秋冬、四季いろとりどりの自然の移り変わりと人生の歩みとを明神様は何百年もの間、 じっと見つめながらこの川端に立っている。