月舘町伝承民話集 -041/200page
もどぶろく一ペいどうだい。まだ少し残っているで。」と茶碗を突き出す者もいたし、ジロジロ嘉作を見つめる者もいた。
体よく話合って帰るときに嘉作は
「久し振りに帰って来たが何も皆さんにお土産もないし一つお土産のかわりに面白いものを見せましょう。俺がそこにある徳利の中にはいって見せましょう。」
これには 皆も驚いた何ぼ何でもこの中に人がはいれる筈もないのにと見ているうちに嘉作さあは、それっといううち に両足がはいった。そして、わが足数を数えながら腰胸頭まではいって終った。数の声が段々遠くなってついに聞えなくなった。皆がわいわいわい大騒ぎをしているところに、上の方から来た人が
「何事だい。みんな してよ」
「いや今、嘉作さあが暫らく振りで帰って来て、この徳利の中にはいっちまって出て来ねえので皆で 見ていたとこで」
といったら、その人が
「何だ。俺、今向うで嘉作さあに逢って久し振りだあって立話して 来たところだ。」
徳利を取って見ても嘉作さあはいないしその重みもない。嘉作さあは、キリシタンバテレンを習って来たんだべえか。確かにこの徳利の中にはいったのを皆で見ていたんだもんな。ま違げいなくはいっ たんだ。2、こんな話もある。
昔、伊達の長岡の天王様のお祭は天王糸市といって、一年の糸相場はこの市で決まるとまで言われ、福島 は勿論、宮城・岩手方面にまで出荷されるという大した取引がされたことは、知っての通りである。
そのお祭りは旧6月14日であった.。暑い最中でもある。そのお祭に甘瓜をボテ籠一杯にかついで来て売 っている親爺がいた。だが他のところより高いのと不愛相なので、さっぱり売れないので、ボテ籠には朝来た 時と同じに瓜が山と積まれていた。