月舘町伝承民話集 -071/200page
んでしまいました。草木をわけながら、どんどん山の 中を歩いていると、かすかな音が聞こえてきました。 すると大きな木の根のところに大蛇がとぐろを巻いて、 いびきをかきながら眠っていたのです。留太郎はおど ろいて、足がふるえ出しました。どこをどう走ったの か夢中で山をかけ下りました。家に帰っても口もきか ずに寝てしまいました。家の人たちは留太郎が余り眠 っているので心配しましたが、起きようともしません でした。そして七日七晩も眠り続けたといいます。
後になって部落の人の話を聞きますと、延田の山奥 に棲んでいた大蛇が、川越に出て御代田の五幸山の方 へ行くのを見たということです。しかし五幸山の山火 事の時、この大蛇はどうなったかと、みんなで心配し たそうです。留太郎の見た大蛇は五幸山の主であった かも知れません。昔から五幸山では大蛇を殺してはな らないといわれています。五幸山には、蛇をまつった 祠もたくさん残っているのです。