月舘町伝承民話集 -072/200page

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月宮神社とその由来

 時は、寛政年間の夏七月と記されている。幼ないときから仲もよくまた常に信仰の深かった治郎兵衛と平左衛門の二人は、例年にならい今年も家族たちと水盃を交し、出羽の三山をめざして旅立ちをしました。途 中はつつがなく無事月山につき、その夜は長旅の疲れもあって早寝一夜の夢を結んだ。

 あくる朝、お来光を拝むべく二人は連れ立ち朝もやの立ちこめる鏡ヶ池へとたどりつきました。二人はこ こで身も心も清め、お来光を迎えようと思いこの鏡ヶ池に身をかがめ、先づ手を洗い顔を洗おうとしたとき ここに全く不思議なことが起りました。それは、まだ朝日も昇っていないのに、池の中で突然キラリキラリ と光るものがあり、二人ともしばし呆然としてしまいました。しばらくだまって顔を見合せていた二人は、 驚きと好奇心との心境にあったが、やがて恐る恐るはいていたもも引きを脱ぎすて、氷のように冷たい鏡ヶ 池の中に入ってゆきました。

 はじめの恐れもどこへやら、二人は夢中になって光ったあたりをかきまわしているうち、何か堅いものが 手にふれました。二人は急いできれいな水でこれを洗いましたところ、なんとこれはまぎれもない木彫の仏 像で、かすかな朝日をうけ何かを呼びかけるように、柔和な尊顔を二人に向けておりました。二人は、こお どりし、これはいつも厚い信心をしていることへのお授けであるとおしいただき、参拝もそこそこ帰宅しま した。

 仏像は、いろいろと安置の場所の変遷をへて、現在の女神山麓に祠を建て、祭神に月読命、月夜命の御神


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