月舘町伝承民話集 -074/200page
御代田駒爪山の由来
それは昔々、ある年の夏の日の昼下りのことである。それまで一点の雲もなく晴れわたっていた空が、一 天俄かにかき曇って真暗になり、大きな雷鳴とともにしのをついたようなどしゃぶりの強い雨がひとしきり 降りだした。そのとき、ひと際大きな雷鳴と稲妻がしたと思うと、天にもとどろくような大きな音がし、 一瞬雷鳴も強い雨もぴたりと全くうそのように止んでしまった。
と、村人たちの大騒ぎの声が聞えてきた。
「大へんだい。天から馬が降ってきた。」
「たしかにあれは馬だ、おれもたしかに見たんだから間違いはねい。」その内「おれも、おれも」という村人たちで騒ぎはますます大きくなるばかり。
「これは、人が馬を大切にしねえもんだから、天の神様が怒って馬を降らしたんだべい。」
「あそこの山だ、あの山のあたりに落ちたようだった。それ、みんなで行ってみろ!!」ということで、村人たちは大勢しておそるおそる山に登りはじめた。しかし登りつめためざす山の頂上は、静 まりかえりどこを探しても馬の「う」の字もない。ところがどうだろう全く不思議なことに、かつて村人の 誰も見たこともなかった山の横あいに、畳二枚程の大きな石に「馬の爪跡」が生々しくぼっかりと、深く刻 み込まれているではありませんか。それから村人達は、この石を「駒爪石」と呼ぶようになり、里人の信仰 をあつめたということである。この駒爪山に登ると御代田平野が一望に入る、すばらしく見晴しのよい山で