月舘町伝承民話集 -079/200page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

名刀蛇に化ける

 むかし伴三郎という落人が長畑にすんでいて、坂壁山を越えて川俣町に絹糸売りをしてくらしていた。川 俣町で酒のんでの帰りみち、女神の太左衛門の裏に「おみたらせ」と名づける清水が、岩の間からこんこん とわいているので、そこでしばらく休んだ。帰ってから、うっかり腰のものを忘れてたことに気がつき「ば あさん、困った。大切な腰のものをどこかに忘れてきたでば。蛇丸という名刀だったがなあ。」とがっくり力 がぬけたようになり、それでも気をとり直し坂壁山までいってさがしたが見つからない。一方、太左衛門の 女中が水くみに「おみたらせ」に行ったら、大蛇がいたのにびっくりして「たいへんだ、大蛇がいた。」と息 せききって報告した。太左衛門はそれを見ようとかけて行ったが、姿は見えず一振の太刀が清水の井戸のわ きにあった。よく見ると正宗の銘があり、この刀はただものではないと思った。

 あとで伴三郎はわけを話して返してもらったが、その後、その刀は上小国のある家に入り、うぶすなの祠 の宝物として祀ってあったが、大東亜戦争となり刀もともに出征したが、とうとう戦地でなくしてまった。 これは22尺3寸の太刀だったという。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は月舘町教育委員会に帰属します。
月舘町教育委員会の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。