月舘町伝承民話集 -083/200page
桐山の開祖高原藤兵衛
御代田の俗称桐山というところに、慶応二年に建てた「桐山開拓記念碑」があることは余り人々に知られていない。
この開拓は、御代田岩内の高原藤兵衛である。藤兵衛は60オの時何か世の中に残したいという一念から、 現在屏風岩といわれている一帯に、桐山の開拓事業を興すことを思い立ったのである。その規模は、山林約三町歩(三ha)を開墾し、桐一万本、楮(こうぞ)年間五首駄というもので、桐は十ヵ年の計画であった。藤兵衛は先 ず開拓地に家を建てたが、この家が又立派なもので、庭には泉水、弓場、馬場、茶室などがあり、馬頭観世 音も祀ってあったというし、宅地の廻りの石垣は高さ2米、長さは100米に及ぶもので、居集より桐山ま では巾3米の道路をつくり、両側は杉並木とした。このような大邸宅であったし、人柄も大変よかったため 里人の見物は絶えることなく、訪れた人々にはいつも薬揚などを沸かして客をもてなしたという。
さて、開墾であるが相当の急斜面まで堀り起し、約三年位で完成したということであるが、他の事業は完 成半ばにし66オでこの世を去ったのである。藤兵衛一代にして、しかも60代にしてこの大事業を思い たった彼は、正しく当時における先覚者であり努力家でもあったろう。現在も開拓地跡には当時の面影を残す道路や石垣などが見られるが惜しむらくは、この碑以外には語りかけてくれる資料としてないことが悔まれるところである。