月舘町伝承民話集 -091/200page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 その織物が近所の評判となり、このけちんぼ男はいつかくらしがよくなっていったが、さて一つ不審なこ とに米びつの米の減り工合いがどうもおかしいことに気づいたんだどぉ。それである日、仕事に行ったふり をして戸のすき間からのぞいたら、一匹の大蛇がどぐろをまいておにぎりをペロペロのんでいる凄いありさ まをみてしまった。男は、さてはあの娘は蛇だったのか、蛇につけねらわれたと思うとゾッと寒気がして、 このままでは狂い死により外はないと思案にあまったんだどぉ。そうして仕事などもう手がつかず、めしも のどを通らないほどで、鉢巻きしてドッと床についたんだどぉ。女房はまめまめしくしてくれたが一たんす さまじい正体を見てからは、二度と近寄れない。それを知った女房はカッとなって
 「正体をみられたか。く やしい。生かしておくものか。」
と恐ろしい大蛇の形相となり、ひと呑みにしようと追いかけてきたんだどぉ。
男はほうほうのていで寝床からぬけだし、どんどん走ってゆく。そうしてあわやひと呑みという途端に、道 の傍らに生えていたよもぎとしょうぶを夢中でつかんで蛇に投げつけたんだどぉ。蛇はぐったりしおれて姿 を消してしまった。それが五月五日の節句の日だったので、屋根のひさしによもぎとしょうぶをさして魔除 けとしはじめたんだどぉ。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は月舘町教育委員会に帰属します。
月舘町教育委員会の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。