月舘町伝承民話集 -095/200page
みなみやまのばか婿のはなし
みなみやまのばか婿のはなし イ
むかしむかし、みなみ山にばか婿がいたんだどぉ。あるとき山の向うの部落の知りあいによばれて出かけ ていったんだどぉ。そこで石うすでひいた小麦だんごをよばれ、あんまりうまかったのであごが外れそうになって何杯もお代わりをしたんだどぉ。そこで家に帰ったら早速つくってもらおうべい。そう思ってその名 前を忘れまいと帰り道にくり返しくり返し、だんご、だんごとつぶやいてきたんだどぉ。
ところが山道に堀があって、それをどっこいとのっこえたとたんに、だんごという言葉を忘れてしまったんだどぉ。どう考え てもだんごの名前がでてこない。あげくのはてに口をついてでてきたのは、さっきのどっこい、どっこいだったどぉ。
家にもどってくるがはやいか
「いまきたぞぉ、おっかあ。どっこいどっこいという、うまいもの をよばれてあごが外れそうだったぞぉ。おめいも作ってくれろ。」
とそのうまい味を話し、だだっこのように 妻にせかんだどぉ。
「馬鹿をいうもんでねえ、とっつぁあ。どこにどっこいなんてあるもんか。」
とうとう夫婦 けんかが始まり、ばか婿はほうきでたたいて妻の額に大きなこぶができたどぉ。それをみた妻はたまげて
「だ んごのようなたんこぶができた。だんごのようなたんこぶができた。」といってしりもちをついたんだどぉ。
ばか婿はその声を聞いてやっとだんごを思いだし、
「おっか、、おっかあ。そのだんごだ。そのだんごだ。」と 手をたたいてよろこんだどぉ。