月舘町伝承民話集 -097/200page
それで初めて行くことだし、粗相があってはならないと、母親は行儀作法をこまごまと話をして聞かせたん だどぉ。そのうちの一つは、もしよばれてごちそうになったあと、茶碗に湯をつがれて熱かったら、たくあ んで湯をかきまぜてさましたあと飲むのがよいということだったんだどぉ。さてばか婿はよばれて湯を飲む ときのことを忘れまいとくり返しのみこんで出かけたどぉ。ところが、まっ先にわらじばきの泥だらけの足 を洗うようにと洗足たらいに湯をいっぱいもって来られたんだどぉ。ばか婿はここぞとばかり、
「たくあんも ってこい。たくあんもってこい」
と大声でよんで、たくあんで湯をかきまわして足を洗ったどぉ。しゅうと の家ではこの様子がおかしくて、腹をかかえて笑ったんだどぉ。ばか婿のはなし ホ
みなみやまのばか婿があるときしゅうとに使いに行ったんだどぉ。そこでしゅうとは婿どのをもてなそう とあれこれと気を配ってこう聞いたんだどぉ。
「婿どん、なに食うべなあ、手打ちか。それとも半殺しか。み な殺しかな。」
ばか婿はそのしゅうとの言葉にびっくりして、あたふたと逃げ帰ったどぉ。妻は
「とっつぁあ、 あんまり早かったでねえか。なにも食わずにきたのかい。」ときくと
「おっかあ、殺されそこなって逃げ帰っ たので食うところでねえべい。しゅうとはなあ手打ちか、半殺しか、みな殺しといったんだぞぉ。」
「とっつぁあ、 手打ちとはなあ、手打ち蕎麦よ。半殺しはなあ、ぼたもちだべいし、みな殺しはうすもちだべい。」
ばか婿は それを聞いて、よだれを流し惜しかった、惜しかったとつぶやいたんだどぉ。ばか息子のはなし ヘ
むかしむかし、みなみやまにばか息子がいたんだどぉ。年ごろになったので嫁とりのことになり、山の峠の