月舘町伝承民話集 -113/200page

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こ ぼ れ ば な し

づだなかせのはなし イ

 むかしむかし、一人のまま子がおったんだどぉ。夕方に山の向こうへ使いにやらされることになったんだ どぉ。まだ秋の日は明るいしもどって来れるから、ひと走りいってこい。まま母はつれなくそういって、ふ ろしきに包んだものを渡したんだどぉ。まま子は泣き泣きいいつけられるまま、それを持って山の向こうへ 出かけだどぉ。ゆかないとしかられる。それで出かけたが、夕焼が明るいので日暮れにはまだ間があると小 径をのぼって行ったが、秋の日はつるべ落しという夕焼空は急に灰色になり、みるまにやみとなってしまい どこが小径か、途方にくれてしまったんだどぉ。あとでみんなはまま子がどうなったかを知るものはいねえ でなあ。夕焼空を見ると、あれはづだなかせとそう呼んだどぉ。

親孝行の息子のはなし ロ

 むかしむかし、親孝行の息子がいたんだどぉ。山に柴刈りに行って仕事をしていると、そこに汚ないしら がの婆さんがきたんだどぉ。そしてなにをするのかとこの息子は刈る手をやすめて見ていると、婆さんは日なた の落葉の上に坐って、しらみとりを始めたんだどぉ。しらがの髪の毛やえり足とぷちっ、ぷちっとつぶす音 がしたんだどぉ。やがて息子のいることに気づいて
 「やれやれ、若いもの。わしのからだにしらみがたかっ てなあ。かゆくてかゆくてたまらねえでなあ。若いもの、背中のしらみをとってくんねえか。」
そういってし らがのお婆さんは首をさしのべだどぉ。息子は汚ない婆さんだし、しらみをとってつぶすことは気味が悪い


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