月舘町伝承民話集 -114/200page

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し、初めは「やんだなあ」と断わろうとしたが、根が親孝行の息子なのでこの婆さんがかわいそうになって、 いわれるままに背中や頭や首のしらみをとったんだどぉ。すると婆さんは
 「若いもの、ほうびをくれるから ついてこっせ。」
そう言ってすたすた歩きだしたんだどぉ。息子がついてゆくと、山の奥に大きな家が見えだし、 そこがお婆さんの住居だったどぉ。お婆さんは金のさかづきを奥の座敷からもってきて、息子にくれて
 「な あ若いもの、お前の親切のごほうびにこのさかづきをくれるでなあ。何でもほしいものがあったら、さかづ きをふせてふれ。」そういって婆が見えなくなったどぉ。
不思議に思って家に帰ってから、そのさかづきをふ せてほしいものを願ったら、目の前にもりもりとそのほしいものが出てきたどぉ。神様だったんべなあ。

親孝行の息子のはなし ハ

 むかしむかし、伝願坊というたいそう親孝行の息子がいたんだどぉ。父親が病気になって、薬を手に入れ ようと遠いところまで出かけて、それを買ってきて服用させるやら、うまいという食べものはどんなに高価で も買ってきて、料理して食べさせていたんだどぉ。だが父親の病気はなかなかよくならずに、からだはやせ るし気力も衰えてくる。もうどうしようもなくおろおろするばかりだったんだどぉ。そうしたなかで、父親 はたけのこを食べたいといいだし、まだ春の彼岸前で家の者は困りきってしまったんだどぉ。息子はそのと き、
「とにかく竹やぶへいって堀ってみべい。」と、まだ雪のどっさりあるやぶの雪をかきわけかきわけ、唐鍬 で竹の根を堀り始めたんだどぉ。
ところが不思議にも、その掘ったところに、にょきにょきとたけのこが出 ていて、びっくりしたんだどぉ。息子の孝心の深いのに神様は願いをかなえて下さったのだと、もっぱらのうわさだったんだどぉ。


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