月舘町伝承民話集 -119/200page

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ばばその囲炉裏にあたらせてくれ、山の小娘だ。」「小娘だどぉ。戸はあけられねえ、おなごの一人暮しにはだれも知らぬわい。」

 こうして夜になると毎晩のように、トントントンと音がしたんだどぉ。ばあさんは根負けして戸を開けてみたんだどぉ。一人の娘がそこに立っていたのを見てばあさんは「さあさあ入ってあたらっせ。たき火をうんとしてあげべい。」と。そうしてその娘をあたらせたんだどぉ。ところがたき火にあたってしばらくすると、 その娘はうとうと眠気がして、気をゆるしてまたをひろげて眠ったどぉ。ばあさんはそこでちらっと毛むじ ゃらのすねとおちんちをまる出して正体を現わした古狸を見たんだどぉ。ばあさんは「古狸め、ばあさんを ばかそうとする気だな。」と。そううなずくとその晩はなにげなく帰して、次の晩を待ったんだどぉ。そして 囲炉裏に小石をくべて、それをまっ赤に焼いておいたんだどぉ。案の定、古狸がまた次の晩もやってきて、 横柄に足を出して居眠りを始めたんだどぉ。ばあさんはすかさず、焼いた小石を火ばしではさんで、古狸の おちんちにあてたんだどぉ。すると、あちちあちちと逃げまわって庭にころげ出たが、やけどが深くて化けそこないの古狸はそこで死んでしまったんだどぉ。

(3)古猫にかみ殺された嫁さんのはなし

 むかしむかし、年をとった古猫が飼われていたんだどぉ。その家では嫁さんが機織がたっしゃで、朝早く から夜遅くまで、トンカラリ、トンカラリと、おさの音をひびかしていたんだどぉ。ある晩のこと、嫁さ んが機を織っていたところへ、古猫がやってきて「ねえさんねえさん」とよんだどぉ。嫁はなにげなくふり むくと、猫は前脚をそろえてたつと「ねえさん、猫の踊りを見せべいなあ。だが決して人にこのことを話し


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