月舘町伝承民話集 -120/200page

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てなんねえぞい。」そういってじゃれついたんだどぉ。嫁は好奇心にかられて「猫踊りかい、踊ってみせてく れい。」と日ごろかわいがっていたので、そういってみたんだどぉ。猫はニャニャないてうなづいたと。みるま に、手ぬぐいを姉様かぶりにし、前脚をたてて機のまわりをふしまわし面白く「猫の踊りじァ猫の踊りじァ」とピョンピョンはねたり、ひげづらでニタニタ笑いながら踊りあるいたんだどぉ。嫁は気味悪くなって、あ とでそっと婿にそのことを話したんだどぉ。すると古猫は次の晩、機を織っていた嫁のところにやってきて、 白ひげを逆かに立て、目をらんらん光らせて「やい嫁どん、こうなっては、わしは山へゆかにゃならなくなっ た。こう正体をみやぶられては、おめいを生かしておく分にゃいかねえ。」とうとうと魔性をあらわし、嫁の のどをかみ切った。アッというまに狂い声をあげ助けをよぶ嫁をしり目に、一目さん山へ逃げこんでいった んだどぉ。猫は魔物だべい。

(4)狐にかたきをとられた法印のはなし

 むかしむかし、法印がおったどぉ。山開きのためきゅうを背負い、装束もりりしくほら貝をふきたて、しゃくつえをのっしのっしとたてて、山へむかったんだどぉ。ところが、このほら貝のひびきに昼寝をしてい た古狐はびっくりして、山道を一目散に逃ていったんだどぉ。やがてこの狐はこれをうらみに思い、必らず 法印を困らせてやるべいと尾をさかさまにふりたて鬼火を燃し、霧をよび、山道をふさいでしまったんだど ぉ。さて法印は明るい真昼だというのに、どうして霧探く暗くなったか、何かけものの仕業かとぞくぞく寒 気もして、一歩も前へ進むことが出来なくなったんだどぉ。いぶかしく思いながら、見ると一本の大木がそ こにたっていて、こずえの方が明るく見えたので、木によじ登ってあたりを見ようとしたんだどぉ。ところ


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