月舘町伝承民話集 -121/200page

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が登れば登るほどあやしい霧は足もとを隠して包んでくる。おりることは出来ない。やむなくこずえのてっ ぺんへ登っていったんだどぉ。そうしてしんぽいまで登りつめたとたん、おそろしい狐のなき声がしたと思 うと、びっくりしてそこからまっさかさまに墜落して、ドシンと木の下にあおむけになったんだどぉ。しば らく気絶していたが、気がつくと霧は晴れて、そこに長い年月を経た七色の古狐がたっていて「やい法印、わしの昼寝を邪魔したうらみだ。気をつけろ。」と逆毛をたてて怒ったとみると奥山めがけて、ひとっとびに消えてしまったんだどぉ。

(5)あまのじゃくとうり子姫のはなし

 むかしむかし、山の中に、じいさんとばあさんと一人娘のうり子姫がくらしていたんだどぉ。うり子姫は 都のお大尽に近く嫁にゆくことになって、お嫁支度の機織りをして、トンカラリトンカラリとおさの音を、 朝早くからひびかせていたんだどぉ。ある日じいさんとばあさんは用ができて、ほかの村に出かけることに なり、うり子姫にいってきかせたんだどぉ。「うり子姫なあ、急用ができてわしらは山の向こうに出かけてゆ くが、一人で留守居をしてくれなあ。」うり子姫は「はい」と素直に答えたどぉ。じいさんは「なあたった一 つ気がかりがある。いたずらで悪者のあまのじゃくが、わしらのいないのに気がついて、きっと山の向こうからやってくる。そのときはあまのじゃくに口をきくでねえぞぉ。」利口なうり子姫はそれを胸におさめて、 留守居をすることになったんだどぉ。そして、晴れた日の縁先に機を出してトンカラリトンカラリと歌をう たって機を織っていたんだどぉ。そうすると、しばらくして山の向こう何やら人をよぶ声がしたんだどぉ。 うり子姫は悪いことの起きる予感がして、障子をしめて機織りしていたんだどぉ。だんだん声が近づいて、


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