月舘町伝承民話集 -133/200page

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はどうなんだい。」

 猿はこれを聞くとにわかに腹をおさえて、ウーンとうなり出した。

 猿「蛙どん、おれな昨日から腹が痛てえんで困ってるんだ。二、三日したらよくなっペからひとりでつく ってくれねえか。」正直な蛙は「腹が痛ていときは誰でもできねいな、ほんじゃらおれだけでやっべ。安心し て早くよくなれや」と別れ、蛙はそれからわき目もふらず一生懸命苗代づくりに精出した。

 苗代はできた。さあ次は種まきだと猿を訪ねた。猿は蛙の姿を見るが早いか、顔をしかめ 「この前の腹の 痛いのがまだよくなっていねいんでなあ、ああ痛てい、痛てい。」蛙はせっせと籾をまき、水をかけたり干し たり丹精こめて苗を育てていった。

 田植えである。蛙はまた猿を訪ねていった。今度は木から落ち腰をしたたかうったので昨日から休んでいる のだと寝床に急にもぐり込んでしまった。蛙はやむなく苗の延びを楽しみに手入れに余念がない。いよいよ 田植えである。猿はその約束日にもとうとうこなかった。それから暑い日盛りの草とり、やがて秋である。 ずっしり実った稲穂を見て蛭は一生懸命働いた甲斐があったとご満悦である。秋のとり入れもすっかり終っ た。それでも猿は一度も顔を見せなかった。米俵を見て蛙は猿を訪ねた。「もち米もたくさんとれたし、明日 餅つきしようと思ったんだが猿どん都合はどうだべない。」猿はこんどは大よろこび「それはよかんべい病気 もよくなったし、おれつくからな用意を頼む。」と、猿は大はしゃぎである。さてその翌日餅つきである。だ が一寸まてよと猿は考えた。このうまい餅を蛙に食はれてはもったいない、これは一つここでお猿様の知恵を絞っておれ一匹で食ってやろうと考えた。そこで蛙にむかって 「なあ蛙どんや、そこでただ食ってしまっ


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