月舘町伝承民話集 -134/200page
ては面白くねえどうだい向い山のてっぺんから臼ごと落し、先に餅に追いついた方が全部食べることにしっ ぺえでねいか。」蛙はちっともいやな顔もせず「よかんべえ。」と賛成した。二匹はエッチラオッチラようよ う臼を山の頂上に運び上げ一、二の三でころがり落した。臼は反動をつけ木も草も押し倒しながらころがり 落ちていった。猿はしてやったり、餅は全部「おれのものだ。」とばかり、臼の後を夢中になって追いかけ下 りてゆく。蛙はそのあとをノソリノソリとついていった。
頂上から少し下ったつつじの株に廻るハズミでとび出した餅がくつっいていたのである。蛙は大喜び、ベタ リ、ベタリ目を白黒させながら食べていた。沢までころがり落ちた臼には一かけらの餅もついていなかった のである。ガッカリした猿はアチコチと探しながら登ってくると蛙はゆうゆうと腰をおちつけ、さもうまそ うに餅を食べている。猿はもう腹がペコペコである「蛙どんや、おれにも少し食わせてくれねいか。」蛙は見 向きもしないで「猿どんやあんたはな、一度も仕事もしねいでこのわしにばかりさせたんだぞ、それにこん どは餅をついたら、わしには食わせねえいつもりなんだな、神様はチャント見ていらっしゃって、このわし だけよく働いたということでお授け下さったんだ。づるいなまけもののあんたには一かけらだってやれねい ぞっ。」
猿は赤い顔を更に真赤にして平あやまりにあやまったとさ。