月舘町伝承民話集 -135/200page

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小 手 姫 の 巾 着

 昔、川俣に底なしといわれた清水沼というところがあり、この沼のほとりに芋作という百姓が住んでいた。この芋作は百姓のかたわら清水沼に祀ってある小さな祠の社守りとしていたのであるが事情あって、この社守りができなくなり、ある日突然祠に祀ってあったという小さな「巾着」を持出し流浪の旅をする身となったのである。

 それから、その巾着がどのようになって人から人へと伝わっていったかは明らかでないが、流れ流れて御代田村御山下のある家に入ったということであったが今は、川俣の某神様に収っているとのことである。

 この巾着には、次のような話が伝えられている。この頃御代田の冬山というところに山村某なる者が住ん でいたが、この山村某の家は没落寸前だったという。そこに、ある流浪の百姓風の男がその家を買いとって 移り住むようになった。そしてこの人が大事にして持っていた巾着を天井の梁にくくりつけ「これは決して 見てはならぬ、見ると目が潰れる」と代々言い伝えられ誰も見た者はなかったという。

 巾着はまたその後どのような事情でかは明確でないが、不思議にもまた川俣の人の手に渡りいまは、某神 社の宝物「小手姫の巾着」として奉納されているという。

 因みに、この巾着の中味は一体何であったのだろうか、仄聞するに、石の玉が1つと巾2寸位の経巻が1巻、そしてその石には5匹のカニの化石が付着していたということである。


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