月舘町伝承民話集 -156/200page

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手渡八郎義為子孫、手渡周防守宗成のこと

 時は天正年間手渡館山城にて、城主手渡周防守宗成は従臣手渡丹波、原将監忠成、樋口三郎右衛門、兵士 多数を従へ城内大広間に集めて軍議を凝しぬ。
城主「今朝より我軍死力を尽して防戦怠なしと雖、敵は名に 負う奥州の猛将独眼龍伊達政宗、加之雲霞の如き大軍、彼は数日来郡内諸城を屠り悉く味方に附け諸豪を風 靡して部下となしおわんぬ然るに我孤城を擁して独り、数年来の戦いに節を屈せぬ、四方の武将唯一人として 余の情節を謳歌せざるなき。之の時に彼は如何にもして素志を貫き、年来の宿志を達せんとする。今度の攻 撃我軍は彼を郤けん事容易の業にあらず唯一るの望は屍を城内に曝さん、覚悟にて全軍一致敵に当るにあり 皆の衆、余の心を酌みて最後の忠勤を擢んで呉れよ。」と周防は決意の色を眉けんに現したり。
丹波「仰せ畏り 候へ平生君の意に従わざらんや。戦には勝敗は常なり。勝利は軍の多寡に関せず主従協力するは、赤誠の精 神によりて決するものに候我等臣下一同一人として君の為、我身を捨てて当りなばなどか勝たずと云う事候 はじ。いざ用意召され各々方」
 丹波は切歯扼腕臂を撫し大刀を握る。

 将監 「いうにや及ぶ死出の一戦共々に我手渡勢の腕の程を現わし敵に一泡ふかして見参せん」 と、一同立上る時に兵士駈け来り一同の前に跪きて申す様。
兵士 「我君に申し上ぐべし各々方も共に承り候へ敵の大軍 既に糠田口名搦手より、雪崩を打って攻め入り、はや我第一陣を打破り二の木戸迄押寄せたり、諸勇士討死す る者、算なく危険に頻し候」
再び兵士一方より来りて大刀を杖つき一輯して兵士 「大手口もはや破れんとす る秤にて候。只今合戦酣に候うて山本主膳殿、討死致して候」
樋口 「こは愈最後の一戦を討す可。時機致来


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