月舘町伝承民話集 -157/200page

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いざ運を天に委して雌雄を決せん。我君始め各々方御仕度は如何に」周防「諾しき者共続け」一同南方指し て突進し大手に向う。 戦況城兵の前に躍り出でたる伊達の軍勢此方に押寄せて、原田主将となり兵士数多 従ふ。こは敵方一方の大将と見受けたり我は 「伊達政宗の臣伊達家にさる者ありと知られたる原田和泉なり いざ首級を戴かん者共「部下を顧て」「功名手柄は仕勝ぞ後れを取りて敵に後見するな」 と下知して互に大刀 抜きつれ渡り合ふ手渡勢周防を守護して、丹波「さては貴下は伊達家随一の勇将と称せらるる原田殿か、我 は手渡丹波なり、戦場に問答無益なり互に卑法なる振舞致すな。我軍の手並を見られよ」丹波を先頭に一同 防戦し矢叫の声剣戦の音巷に満つ。伊達方遂に気力挫け原田味方を顧「原田戦不利なり再挙を図らん引け」 原田退く。丹波 「原田殿卑怯なり引返せ」原田遂に引く丹波追はんとす。周防「深追致すな一先づ城中に引 返し後図をなすべし」一同引返し、この位置につく。時に兵士 「東方天主下館口の激戦急にして守り難く候 敵は全力を此処に注ぎ、大手口原田和泉の軍も合して我軍利あらず要害地として手薄き城背、下手作ロ (現冷田作ロ) にも大軍押寄せ既に砦近く迫り味方は肉弾を以って防戦致し候得共如何せん。手負討死少からず 今やこれまでなりと存じ候…‥……」周防「大儀であるぞ然し落胆致すに及ばず今一応最後まで防げ」兵 士出て行く。原「今朝よりの合戦敵には新手あり我には続く者なし我が君如何遊ばされ候や」周防「天なり 命なり既に日は暮れ果て、闇深し城と共に消えん。之れ武門の本懐見苦しき態をなして敵に笑を残す勿れ」 丹波「否我君死は易く生は難しとかや鳴滸がましくは候や」原「丹波殿の言最もなり我々は命を既に君に捧 げたるもの死は寧ろ願ふ所に候へ共今夜此の、うば玉の闇は天我宗の苦節を嘉して幸を与へつらん我永く当 地に住して四方の山河地理に通ず願くは我先導仕らん異なく一先相馬へ落ちん途遠しと雖我案内仕らんには


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