「ふるさとの小径を行く」 -065/168page
椚平(くぬぎだいら)のお周防(すわ)様
布川の茶畑から犬飼に抜ける山合いに椚塚という所があります。
二百年ほど前までは、人家二〜三軒あり、恵まれた暮しをしていましたが、或る年一旅僧がこの地に留ってからこの部落に大きな変化が起こり、旅僧は殺され、その為か部落の人たちも没落し、ついに転居して無住の地となってしまいました。土地を離れる際の供養碑や、旅僧を祀ったといわれる周防明神が草むらの中に淋しく立っています。
現在は雑木林の中になり、とても住めそうにもない不便なところですが、かつては、茶畑と犬飼の中間にあって人の行き来もあり、自給自足の生活にはとくに困ることはなかったものとみられます。交通の変化とともに部落の離合離散の姿を感じさせられます。