上川崎和紙 -010/017page
紙への道 2
伝統の技の冴えが、ふくよかな紙を漉きあげる。
楮槽に漉き簀を挟んだ桁を入れ、前後左右に揺する。材料の溶け込んだ白い水が、漉き簀の上にさあーと広がる。タイミングをはかり、余分な水分を跳ねのけ、和紙の表面を形づける。みるみる間に大判の紙が漉き上がる。経験のないものにとってはいとも簡単に思えるほどの手際のよさである。しかし水切り3年といわれるほどその技の奥は深い。7 トロロアオイ(ネリ)
日本の手漉き和紙は、世界に誇る流し漉きという技を見出した。この技法には補助材料としてトロロアオイ(ネリ)を用いる。紙の材料を均等分散させ、繊維と繊維をつなぎ止める作用を持つ。また、粘着力がないので乾燥の時に一枚ずつ剥がしやすくする効果もある。8 抄造
漉き舟に水と砕いた楮の紙料を入れ、マグワと呼ばれるもので前後に振りながらかきまぜる。そしてよくつぶしたトロロアオイ(ネリ)を入れて、均等に分散させる。ネリ具合も紙の仕上がりに多大な影響を与える。9 数子
簀桁を手に水面と35度の角度で素早く漉き、舟の紙料を汲み上げ、簀全体に和紙の表面を形付ける。この時に汲み捨てる水を化粧水という。10 調子
次にやや深く汲み上げ、前後に調子をとりながら繊維を重ねながら和紙の層を作る。紙の厚さはこの回数で決まる。向かい側が薄くなりやすいので、向かい側をいくらか下げ気味に。11 捨水
目的の厚さになったところで、簀に残った水と紙料を向かい側に捨てる。簀桁を持ち上げ気味にやらないとうまく捨て水ができない。水切り3年と呼ばれるほど技術の習得が必要な作業である