須賀川市人物読本 先人のあしあと -050/134page
のはじまりです、若いころすもうをしていた村の年よりが、行司(ぎょうじ)をつとめます。個人戦のあとは、村一番の人気ずもう、五人ぬき戦がはじまります。五人ぬいた力士が今年の横綱(よこづな)として、たくさんの賞がもらえるのです。われこそはと、力士たちが土俵(どひよう)のまわりにじん取ります。最初のひと組で勝ち名のりを受けると、次は早く土俵に登った力士と競(きそ)うのです、一人(ひとり)ぬき、ニ人、三人まではぬくのですが、五人まで勝てる力士はまだおりません。
そのときです。今までじっと土俵上を見つめていた亀五郎が、すーっと立ちあがり、土俵に上がりました。観衆(かんしゅう)の中から、「鬼亀(おにかめ)がんばれ、鬼亀しっかり」という声援(せいえん)があがりました。地元の人たちは、亀五郎の実力を知っていたのです。何事にも負けん気で、思ったことをやりとげようとがんばる、力持ちの亀五郎を村人たちは「鬼亀」というあだ名で呼んでいたのです。
行司の合図で勝負がはじまり、一人をあっさりと負かし、次々と相手を土俵の外に出し、予想(よそう)通り、五人ぬきを果(は)たし、今年も横綱は、亀五郎だったのです。