須賀川市人物読本 先人のあしあと -117/134page

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 ふき出される煙の雄大(けむりゆうだい)さにおどろいたケサは、

 「そうだ、あの山のように、大きな心をもたなくては……」

と強く思いました。

 ケサをむかえると、旅館を医院になおし、「聖・パルナバ医院」のかんばんをかけました。パルナバとは、「愛の家庭」という意味です。二階は、「なぐさめ館」と名づけ、ケサや千代子のへやになりました。

 いよいよ、医者としての仕事が始まりました。この土地の医者は、ケサ一人なので、小学校の校医から警察の仕事まで、引き受けたのです。ケサがきて、一番喜んだのは、かん者たちでした。今までは、病気が重くなっても、どうすることもできませんでした。

 だから、どうせ死ぬのならと谷川に身を投(な)げる人がたくさんおりました。生きる希望は、何一つなかったのです。お金は使い果(は)たし、家に帰りたくても家族はいい顔をしません。汽車に乗ろうとしても、ライかん者とわかれば乗せてもらえ


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