長沼町の伝説 -012/224page
破ってくれよう」と、寺内にひそんで、その様子をうかがって いた。
丑満の頃、案のじょうズイトンボーと雨戸を叩く音がした。 それっと躍り出て引捕えて打殺して見ると、年老いた狸だった。
今も観音堂の北の方に、清水の出る所がある。ここをズイト ンボと呼んでいる。清水は寺があったとき使った清水という。
(「岩瀬郡誌」より)
猫の踊り 《矢田野》
村に一人暮らしの老婆がいた。老婆は一匹の年老いた猫を可愛がっていた。
ある時、不思議なことに気がついた。前日に洗って置いた手拭が、朝になると泥によごれてなげてあ るのだ。そんなことがたびたびなので、ある夜、注意してみていると、家の猫が手拭をくわえて出て行 くところであった。老婆は不思議に思って、その後をついて行くと、稲荷様の森についた。一目見て驚 いたことには、そこには大勢の猫が集まり、唄をうたいながら踊りを踊っていたのである。
その唄の文句には、