長沼町の伝説 -015/224page

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 すると、あにはからんや、話に聞く妖怪、四面に白布を廻し、旗杭に人間の血の滴る生首をもち上げ て待っていたのである。

 侠気のこの人物、少しも恐れることなく、腰の脇差を引き抜き、怪物の胴体めがけて土ぎわ三寸上を 切り付けたのである。すると、今までの生首は煙のごとく消去り、後には何もなかった。某氏は、これ で怪物を退治したと意気揚揚と家路を急いだ。天王様(八雲神社)のところまで来たときであった。大き な牛が数匹道路一ぱいにねころんでいたのである。

 某氏は、これも妖怪の仕業とばかり、意を決して、脇差を引 きぬきざま土ぎわ三寸上を切り払えば、「七月十五日を待つがよ い。必らずこの怨をはらしてやる」と呻き声とともに、いい残し て、今までの牛の姿は消え失せたのである。某氏はうす気味わ るくなり、急いで家に帰り、それからしばらくの間、妖怪の怨 念を晴らさんと神に祈願をかけていた。

 ある日、ゆううつな気分をはらそうと、雷神山の麓、大ケ窪 地に雑魚すくいに行ったのである。そこには、年端もゆかぬ童 が一人池に入って稚魚すくいをしていた。

 某氏は、着物がぬれると思い、童のそばに行き裾を上げてや ったところ、尻のところに数個の目が怨をこめらんらんと光っ

末子五郎内
末子五郎内


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