長沼町の伝説 -016/224page

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ていたのである。あまりの恐しさに、某氏は一目散にかけて岩崎山の下に来たときであった。また一人 の童が道路にたたずみ、某氏に話しかけたのである。

 「お前さんは蒼い顔をして、あわてているようだが、何か恐しい怪しい物にでも出合ったのではない のか。」

 某氏は「いや何物にもあわなかった。」

 と答えたところ、童子はやにわに自分の胸を開けて、「こんな物はみなかったか」とみせたのである。 見ると、さきほど池で見たような多数の目が妖しげに怨に燃えてにらみつけていたのである。あまりの 恐ろしさに某氏は家にとんでかえり一心に神佛に祈りを捧げておりましたが、妖怪の残した言葉どおり、 七月十五日病名不祥のままこの世を去ったのである。

 その後、上木之崎の森田五右ヱ門という人が、侠気なこの人を憐み、末子五郎内狐が二度とこのよう なことを繰りかえさないようにとの祈願をこめて、八雲神社境内に小さな祠を建て稲荷神社を祀った。 その後、木之崎には化物は出なくなった。

        (話者 森田昌樹)


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