長沼町の伝説 -018/224page
時代の変遷は興亡を極め、多くの寺宝、霊木を失った。特に明治初年の長沼町の大火は、永泉寺まで 延焼して、広葉杉も北側が焼けて、その部分は枝もあまりのびていない。
近年、この寺を訪れた詩人、草野心平氏も、中国にもこれほどの大木は見られず、おそらく世界一の 広葉杉であろうと激賞した。
県指定天然記念物(「長沼名義考」・「長沼町の文化財」写真集より)
畑にジシバリ、田にビルモ 《 滝 》
旧六月のある日、入梅も過ぎて、むし暑い初夏の天気であった。滝村の農婦が子どもを背負って、田 の草取りをしていた。田には、草が生えていたし、お昼間近か子どもが背中でさわぐので、少々面白く なかった。
笠をかぶって、錫杖をついた旅の憎が通りがかった。「アネコ、のどがかわいたのでこの辺に清水はな いかね」と訪ねた。「向こうの一本杉のあたりにあっから、自分でさがして飲んだらよかっぺ」、とつっけ んどんに答えた。
旅僧は、「分かんないので、案内してくれんかね」、と頼んだが、だまって案内もしなかった。
旅僧は、「何と不親切なんだ。畑にジシバリ、田にビルモ、国にドスンボがなけりゃ良いが」、とひとり ごとをいって立ち去った。