長沼町の伝説 -028/224page
地形に関するもの
鬼面山 《勢至堂》
勢至堂屋敷の南西の所、約二キロの山奥に鬼面山がある。高さは一、〇一〇メートルで長沼町で最も高 い山である。この山は二つの峯より成り、南の峯は「トナブ」と呼んで天栄村と境している。北の峯に巨 巌が出ており、それがあたかも鬼の面に似ているので、鬼面山の名がつけられた。
又石背山ともいわれ、石背郡、岩瀬郡の地名の起りだともいわれる。
昔より神聖な山といわれ、女が近づいたり汚したりすると旱魃になるといわれた。
石城の浜の漁師達も鬼面山が見える所までしか漁に出ない。この山は不思議な山で近くの海よりは見 えないが、遠くの海からは見えるという。それで、漁師達はもう鬼面山が見えたから戻ろうと言ったと いわれる。
トチブの山の方には、神楽岩という大きな岩があって、その所を御花畑と呼んでいる。高山性の草花 が咲いているという。またこの山の各所に風穴や熊穴があり神秘的な山である。
この山の岩石は良質のため、山の西側は大掛りな採石場となっている。
(話者 柏木平蔵)