長沼町の伝説 -034/224page
天明八年(一、七八八)幕府の巡見使に随行した古川古松軒は「東遊雑記」を著した。その中に「勢至堂の 南に瀑布二つあり、一つは馬の尾の滝と称して、水口細く次第に広く流れ落ちつ、遠目には白馬の尾の 如し。一つは銚子の滝といい、水に岩、銚子の如し」とあり、広く世に紹介された。
昔から幾多の人の眺めた滝が、今も街道沿いに静かな音を立てている。
(話者 石井政司)
殿様清水 《勢至堂》
勢至堂峠の下の岩間より出る清水で、大雨が降ろうと日照 りが続こうと、少しも水の量が変らず、冷たい水が湧き出て いる。
ある時、参勤交代で通行中の会津の殿様が、その清水を飲 みたいと家来にいった。ここは峠の曲り坂になっているので、 清水の出る上の方が道路になっていた。家来どもは、百姓が 歩いた道の下から出る清水なので、殿様に飲ませることはで きないといって、つい殿様には飲ませなかった。
殿様が飲まなかった清水を、いつしか殿様清水と呼ぶよう