長沼町の伝説 -036/224page
長沼の清水の数々
長沼周辺には、物語りにゆかりの清水が数々ある。
沼の御前といわれる清水……法燈国師や一角和尚にまつわる清水として有名。藤沼神社もはじめはこ の地に祀られてあったと記録に残っている。碑があるが、清水の出つぼに倒れなかば埋まっており、い かなる碑か定かでない。
またたび清水……諏訪の入口にあり、殿様のお菜園として珍重されたという。近くに諏訪神社も祀ら れてあったという。
弥吾の清水……弥吾坂道の下にある。桜の大木があったため、桜の清水ともいわれたという。この桜 の開花が苗代の目安になったといわれる。病床にあって、自ら余命の幾何もなきを悟った者がいまわの 際に一口のみたいといったという。これを家族がきゝ、心を痛めたという。
なお天神の清水を桜の清水といったという一説もある。こゝにも桜の大木があったとか。
おまつ清水……家老内の谷間の奥にあり、白川屋の駒吉の愛妻が、この清水を用いたのでその名があ る。
地蔵清水……地蔵岩の下の川岸の岩門より湧きでる清水。
これらの清水の多くは潅漑の便に供せられ、また、暑い夏には人々の喉をうるおし、親しまれている。
(話者 桑名四郎)