長沼町の伝説 -058/224page
六角石のいわれ 《長沼》
延命寺から沼の御前に行く途中、六角地内の作場道 沿い田堀の傍に、高さ、四尺余軽く一抱えほどの五 角の石柱が建てられてある。これを土地の人呼んで六 角石という。これについては次のような因縁話が伝え られている。
その昔、この地に屈強の猟師がいた。なかなかの腕 達者であった。ある日、沼の御前に二羽の鴛鴦が仲よ く游いでいるのを見て、よい獲物とその一羽を射止め た拾い取って見ると、その首がなかったが、一向に気にも止めなかった。
次の年、再びこの沼に一羽の鴛鴦が游いでいるのを見、これも難なくうちとつた。手にして見ると、 これいかに。翼さの下に雄の首を抱いていた。去年、うちとつた連の首を抱きかゝえていたのだ。さす がの猟師もこの様をつくづく眺め、深く感ずるところあったのか、鳥でさえこのように愛情の深いのにと 己の殺生を恥じ、手厚く葬り、一念発心してやがて一角と稱し、僧衣をまとう身となった。
後世に、わが意を残さんと、五角の石柱をこの地に建て、己が一角を加えて、六角石と名づけ、一院 を設け、ひたすら仏門に帰依した。