長沼町の伝説 -060/224page
守ツ子塚の伝説 《滝》
滝本郷から岩瀬村梅田に行く県道すじに、通称守ツ子塚と いわれるところがある。
昔、滝部落の某家に子守奉公人の娘がいた。どこから来た 娘か、名前は何といったのかはわからない。
娘は子守をしながら、野良に出されて、こきつかわれたと いう。時折り娘の泣声があちこちの田畑から聞かれたという。 働きが悪いといってはさいづち(げんのう)で頭をなぐり、子 どもを泣かすといっては娘をかじった(かみついた)という。 ある秋の取り入れの頃、田圃に出て働いた娘は働きがわるい といっては、ぶったりけったりされて殺されたといわれる。
村人たちは、なぶりころされたこの娘をふびんに思い、殺された場所に塚を造り娘の霊をとむらって やった。
それから、だれいうとなく、この塚を「守ッ子塚」と呼ぶようになった。現在、塚はなく荒涼とした野 原には雑草だけが茂り、風になびくすゝきが生家を恋しながら死んでいった娘のように、かぼそくゆれ ているのみである。
(話者 江連 栄)