長沼町の伝説 -084/224page

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 足を洗うので、水をもらいたいと申し出たので、水を器に入れて持って行ったところ、足を洗った水 を捨てるのがもったいないと、その水で顔をプルンプルン洗い始めた。これを見ていた坊主たちは、「足 を洗った水で顔を洗っているわ」とワアッと笑った。

 「俺が足を洗った水で顔を洗ったのがそんなにおかしいか、しからば一問聞くぞ。尻を洗う湯に入っ て顔を洗うとはいかに」と禅問答を所望したところ、だれも返答できなかったそうである。

 これに驚いた坊主どもは、なんぼ偉いか分からないと思い、丁寧に奥に通したところ、一目求願に見 られた祐天はちぢみ上がって、畳一畳へり下って手をついて、「御身との誓いを破り、かかる大寺の法丈 になって申しわけもござらん」とあやまった。求願はその事については少しもふれず、「御身はかゝる大 寺の主になってよかった」といったきりで祐天を少しもせめなかった。

 いろいろのもてなしを受け、いろいろな話をして一晩語り、翌朝ねんごろに別れを告げた。求願は心 の中でつぶやいた。「祐天の心の中はどうだろう。自分の心を偽って仏に嘘をついて、仏の前に大手を振 って出られるか。俺は名もない乞食坊主だが、仏の前には大手を振って出られる。自分の心を偽って何 が良いことがあるものか、お前はそれで良いと思っているかも知れないが俺は駄目だ。領地をくれる、 金をくれるといわれても、たとえ首の座に座らせられても、そんなことには驚く俺ではないぞ。一旦仏 に願掛けた俺の気持は、決して何物にも動かされないぞ。富士の山を動かしたとしても、俺の心は動か ないぞ」と祐大をしり目にまた滝に帰って来た。

 求願はその後、何年滝に住み、どこの土地で死んだのかははっきりしない。滝屋敷に残された、百八


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