長沼町の伝説 -097/224page

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永泉寺の由来と爺杉媼杉 《長沼》

 大用山永奥院永泉寺は、その年譜によれば、昔、江花村大和山定満寺を、長沼氏が古館に舘を築いた 折に館の北東の地に移して、大用山永奥院と号した。

 その後、新国氏が長沼城を築き、寺を現在の地に移し、永奥院を改め、当山境内の岩間より湧き出る 清水の靈泉にちなんで、永泉寺と号したといわれる。

 この清水は、仏会等の集会がある時、大人数が集まれば、水量が多くなり、その用を足すので、実に 不思議な泉であるといわれている。参道の中ほどに、東に爺杉、西に媼杉という靈木があって、夜にな ると、寝物語をささやく声が聞こえたという。この大杉に、時折、天狗が来て住み、ある時、開山麒山 馨麟和尚が夢の中で形見を賜り、翌朝、大杉の下より天狗の爪を拾い、永く寺宝にしたという。

 またこの寺の大門は、男郎門といって、屋根のない門を建てるのが例となっているが、昔、屋根を葺 いた門を建てたところ、一夜、天狗が来て、その屋根をどこかに持ち去って、行方知れずになったのだ といわれる。

 いつしか時遷り、爺杉は弘化年間に枯れ、媼杉も明治年間に枯れて、わずかにその株跡が残るだけに なった。

 天狗は、大杉が枯れたので、今は広葉杉に来て住み、枝間に天狗の巣があるという。

        (「長沼名義考」より)


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