長沼町の伝説 -120/224page
官命でも動かなかった雷神様 《新田》
桙衝新田の雷神様は、屋敷の南の山に祀られている。この雷神様は鹿島神社(桙衝神社)の末社で、日 照の時は、この雷神様に祈願すれば、必ず雨が降るといわれる。
その昔、白河城主榊原公も、ここに祈願された記録がある。明治の大改革によって、小さい神様は統 合されることになって、この雷神様も、桙衝神社に合祀の指令がきた。さあ村中大騒ぎとなったが、お 上の命令とて、何とも致し方なかった。
いよいよ合祀の日、屋敷中の人が出て、遷すことになった。 みんな遷したくなかったので、始めだれも手を出す者はなか った。村一番の物知りの長老、卯之助爺様が進み出て、「雷神 様雷神様、みんなお別れしたくないんだが、お上の命令でど うする事もできない。このわしが、んぶってお遷しすっから んぶさってください」といって、神様の祠を綱で背負うとして 手をかけた。そしたら卯之助爺が、「手がしびれて動かない。 雷神様に罰が当ったんだ。だれか代れ」といった。
しかし、村一番の長老がこれだから、だれも手を出す人は いなかった。村人は「雷神様は遷っちゃくねえんだ」といって