長沼町の伝説 -137/224page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

長沼の由来 《長沼》

 長沼町の地名の起こりは、その昔、石背国造建弥依米命がこの地に来て、大蛇梟師などの賊を撃ち、 田を墾して、この地を治めた。この頃、東西に長い沼があったので、「長沼」と呼んだという。のちに会 沼、阿曽沼ともいった。西の山の突端に、人の形に似た巨岩があったので、人神、人上、と呼んで靈地 とした。

 沼のほとりには、大きな藤の木があり、美しい花が咲いているので、ここに郷土創生の神として、木 花開耶姫命を祀ったという。これが藤沼神社で、のちに江花の地に移ったのだという。人神石は石背石 とも呼び、現在のはけご石である。

 この沼に一つの物語がある。村に一人の猟師がいて、常時禽獣を獲ることを業としていた。ある時、 沼に行って一羽のおしどりを射殺して帰った。また次の日行って、残りの一羽のおしどりを射殺した。 見ると、前の日に射殺したおしどりの首を、羽の間に抱いていた。このおしどりの精靈が、忽然と美し い女の姿となって現れ、声をあげて一首の和歌を詠んだ。

  小夜更けて寝なましものを長沼の
    其菰隠れに獨り寝ぞうき

と操り返し、高々と詠んでその姿は消えた。

 猟師も、さすがに驚いてしまった。「ああ、あやまったり、おしどりとは男女の情愛深きもの、かか


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は長沼町教育委員会に帰属します。
長沼町教育委員会の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。