長沼町の伝説 -138/224page

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る不思議さ夫を慕う心の切なさは、鳥すらかくの如し。まし てや人と生まれ、かかる殺生を業とするは人にあるまじき事 を」、と忽ち発心して、菩提を弔うと、野刀で自分の黒髪を切 り捨てた。そして一つの悟りを得たので、名を「一覚」と改め て、法燈国師の門に入り、修業を続けた。

 のちに、沼の傍に鴛鴦院六角山延命寺という寺を建てて、 おしどりの靈と六親九族有緑無縁の冥福を祈ったという。

 ある夜、夢にまたおしどりの夫婦が現れて、僧に、「我等 夫婦図らすもおし鳥と生まれ、丈夫に射殺された時は、愛別 離苦生死の悲を起して怨んだが、今は貴僧の読経供養にあず かり、五水三熱の苦患を忘れ、本覚成仏を得たり、吾ら生前 の栖は星より南なる女神山の麓なれば、我等の精靈は、永くその山のほとりに止って近隣の人々を守る男 女の神となるらん、貴僧ねがわくば、延命寺を我がもとの栖なる閑清の所に移して、安く生を養い、命を 易くして不老をとげ給え」、と言って消えた。

 翌朝、枕のほとりに、二つの羽根に二首の歌があった。

    常ならぬ風にちりにし花も今
      御法の雨に実を結びける。

阿曽沼
阿曽沼


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