長沼町の伝説 -154/224page
九の坊さま 《滝》
江戸時代の末のことである。全国を修行している年老いた旅僧があった。名前を九の坊といった。
ある日、九の坊は滝村にたどり着いた。老いた身であり、長旅の疲れも出たのか、病いにかかり、こ れ以上旅することは困難であった。
滝村の鈴木某は他人のめんどうを良くみる情深い人として、村人からも親しまれた人物であった。
九の坊は、こんなことから鈴木某家の世話になることになったのである。鈴木某家ではもちを食べた いといえば、もちをついて食べさせたり、ごちそうをしたり、心あつくもてなした。だが年老いた九の 坊の病気は快復しなかった。
九の坊は、死にぎわに鈴木某をまくらもとによんで、 「私が死んだら、村にお世話になったお礼に、村に災 難や悪病が入らないようお守りするので、村の入口に 埋めて欲しい」と言い残してこの世を去った。鈴木某 が遺言通り村人と相談し、滝の入口に手厚く埋葬した。
それからのち、滝部落には大きは厄病災難はないと いう。
今も滝の入口には「南無阿弥陀仏」九の坊と刻まれた