長沼町の伝説 -165/224page
事件に関するもの
阿梅塚(花畑阿梅幽靈) 《長沼》
戸上山(城山)の東北、したみ川原の南の岡に、花畑という所がある。昔、長沼城全盛の時、長沼信濃 守時貞の妾に阿梅という貞女がいて、殿は一方ならず寵愛した。
本妻は桜姫といって、これはまた極悪邪見であるが、本妻なので、阿梅の方よりは礼儀正しく、常に 尊敬されてい
この両人は共に古今に稀な美人で、殿は常に左右を離さず待らせていた。
ある酒宴の折、臣下の者共も、席に臨み、遊興をした。その中に一人の美男が出て、酒の上の事なが ら、阿梅の方の手を取って踊った。
その事を話の種にして、本妻桜姫は、ある時、殿の時貞に「過ぎし酒宴の折、戯れた男と阿梅は時折密 通している。」と申上げたので、正直一途の殿は疑いの心を起こし、阿梅の様子を探ったが、その様子は 見当らなかったので、以前に変らず寵愛した。
妻の桜姫は嫉妬の心つのるばかり。どうして阿梅を遠ざけようかと考え隠謀をめぐらした。ある者に 密通の艶書をしたためさせ、書院に落として置いたのである。殿はこれを見ても意に介せず打ち捨てて