長沼町の伝説 -183/224page
いる小僧に、牡丹餅をごちそうしようと思って声をかけたところ、小僧の姿はそこになかった。婆さん と二人探しあぐねて、いつも信仰している地蔵様までたどりついた。
ところが、地蔵様の足もとに田の泥がついているのを見つけ、二人は大いに驚き、地蔵様のなせる業 だとなお一層信心を深めたという。地蔵様はいまでも左手を上に挙げ、右手は水平に前にして牡丹餅を 持っている。それ以来、近所の人は鼻取地蔵というようになり、信仰している。
(話者 内山正雄)
藤沼神社にまつわる伝説 《下江花》
● その一
藤沼神社は五穀豊穣、養蚕培増、安産などに靈験あらたかなる神様といわれ、近郷近在はいうに及ばず、 会津方面の三代、福良や、郡山、三穂田方面の人々が、旧四月四日と九月九日の講中には参詣者で大変 にぎわった。山中に屋台店も張られ、子どもたちも着飾って参詣に行き、山中には時ならぬ人声のこだまが響きわ たったものだった。これほど信仰を集めたにもかかわらず、神様など信じないで、とくに藤沼様の悪口 雑言をいつも吐きちらした某氏(天栄村惣五郎内辺の人といわれる)がいた。
ある時某氏が瀧村に用事があって山道を通り、藤沼神社の前の道にさしかかった。見るともなく社殿 の方を見ると、大蛇が江蓮の焔のような舌をペロペロと動かしながら、眼光するどく某氏を見据えてい