長沼町の伝説 -184/224page
たという。
某氏の驚きはたとえようもなく、無我夢中で駈け出し、一目散に瀧まで駆けつづけて某家にたどり着 いた。しばらくは起きあがることもできず、顔面蒼白で口もきけず、伏してしまい、発熱はするし、大 さわぎになった。
帰路はこの道を通ることができず、長沼を大廻りして、神主様の所に行き、祈祷をしてもらって、家 に帰り着いたが、発熱して伏せてしまいその後は藤沼様の悪口は言わなくなったという。
● その二 自現太郎様
藤沼神社は、祭神が木花開耶姫で、女の神様である。夫の 神様は自現太郎様で、宇都宮の男体山の中腹に祭られている 自現太郎神社の神様である。この神様が木花開耶姫にお逢いにお出になるわけで、不時 沼が水をたたえている時は、夫の神様がお出になっている時 であるといわれている。お出になる時は、大雨の時ともいわ れている。
上江花の某氏が、ある大雨の日に、藤沼の道を通った。そ れは篠突くような大雨に風さえまじって、視界がほとんど見 えない有様だった。