長沼町の伝説 -185/224page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 某氏は下を向いて、顔面にかかる雨をさけながら歩いていると、向こうから馬の歩むような異様な音 が聞えるので、ふと顔をあげると、白馬にまたがった神々しい御方が近づいて来るので、無意識のうち に土下座をしてしまった。すると、近づいて来た方が、「これお前、ここでわしに逢ったことを口外し てはならない。そのかわり、お前の作っておる田圃を、今までの倍も取れるようにしてやる。もし口外 すれば、もとにもどるぞ」と言われた。某氏は夢のような心地で家に帰ったが、そのことは口外しなかっ た。今もある八石田というのがそれだといわれている。

 時が過ぎて、口外した故かもとどうりの収穫になったといわれている。

● その三 おこけ
 藤沼様といえば、時ならずして前の平地に御神意の水がたまることがある。いかなる豪雨でも決して 水はたまらず、自現太郎様がお出になるときだけたまるといわれている。神意による沼というわけであ る。

 長くたまっている時は百余日。少なくとも四、五十日はたまっている。

 この沼の中に直径一センチほどのまるい貝状の透明な片側だけの虫が数多く生まれる。学名でなんと いう虫か不明である。当地方では、龍の鱗であるといわれている。

 このうろこは、熱病や「シャク」の名薬といわれ、いただいて行く人がたくさんある。水が引いて乾い てしまっても、沼のほとりの落葉の裏にいるこの「おこけ」をさがしている人々を見かける。

● その四


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は長沼町教育委員会に帰属します。
長沼町教育委員会の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。