長沼町の伝説 -188/224page

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 「そうか、それでは、お前の田からは八石の米と、畑からは五斗の穀物がとれるようにしてあげよう。 そのかわり、約束を守らなかったら、お前は一夜のうちに命をおとすぞ」と言うが早いか、自現太郎もお 姫様の姿も、藤沼神社の方に消えてしまった。

 その年から、太郎兵衛の田からは反当り八石の米と畑からは何を作っても五斗の穀物が、毎年取れる ようになった。

 村人たちは、こうして一年毎に裕福になっていく太郎兵衛のことに疑惑をいだくようになった。

 「太郎兵衛のやつ、米や豆など借り歩いていたのに、最近はずいぶん裕福になりやがったが、他人の物 をぬすんでいるのでは…」ということになった。

 いくら太郎兵衛が、「オラの田圃からは八石の米と畑からは五斗の穀物がとれるんだ」と弁解しても、 村人たちは信用しようとはしなかった。

 思案にくれた太郎兵衛は、ついに村の集会のあったある日、多ぜいの村人たちの前で、「これこれこう いう由で」と、自現太郎さまにあったことやお姫様にあったことの一切を話してしまった。

 その夜、太郎兵衛は床の中で冷たくなっていた。今でも太郎兵衛の作っていた田を八石田、畑を五斗 畑と呼んでいる。

        (話者 江連 栄)


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